マホープロペラ。 |
上塗り成功を祈願。 |
「人を玩ぶ者徳を喪い、物を玩ぶ者志を喪ふ」と書経にあるそうですが、まさに本日のブログはそれです。
先日、金継ぎ教室の帰りに骨董市で求めた掌に収まる何やら謎めいたもの、少なくても実用第一の道具には到底見えない容姿。
不思議なアウラを感じつつもポケットに詰め込んで帰りの帰路についたのでした、、、、。
どうやら柄と思われる部分にはマホープロペラ、、、、と書かれており、縄文時代から続く「祈り」を直覚したのでした。帰りの電車の中でセルロイド製の羽に西日を透かし、そのプロペラのような触角をじっくりと観察しながらある推測が現実に思えてきたのです。
マホープロペラ。おそらくはこの呪術は昔からそう呼ばれていたのだろうと思われます。
昭和30年代、まだ人類の人知が遥かなる高みを実感するにはまだまだ途中の時代。
漆もこの化学が分からなかったその当時はまだセルロイドの仲間と考えられていました。
セルロイドは硝酸セルロースに樟脳を混ぜアルコールと混和して作る物質です。樟脳とアルコールを混ぜ込む行為は、あたかも金継ぎで使用する紛蒔き用の漆をつくるかのようにも見え、当時の人々が漆とセルロースを混同していた様子が推測されます。
ですから、マホープロペラにセルロイドの羽と触角を取り付けて上塗り成功を祈ったのだろうというような事は容易に想像出来ます。
その胴体の背中についた金属製のジャバラを竹櫛などでジャリジャリと擦りながら町中を練り歩くわけですから、勿論体力は疲弊し、おのずと三日間夜通しの呪術の成功は体力勝負となってくるわけです。
そんな事を考えながら、電車の車窓から見える西日にさらされる町などは、どことか抒情的で美しく思えるのでした。
気がつくと、もう電車は終着駅にたどり着いた様です。
高円寺。まだ中央線の途中ではないか、、、、、と尋ねるも、今日東京はマホープロペラの日だから今日はここで中央線の運転はやめにするのだそう。本当なら国立くらいまで行きたいのだけれど、、、とどことなく虚ろな運転手に手渡された一枚のショップカード。
「マホープロペラで疲れた時に食べたくなるんだ。スイーツ」と、
そう言って彼は高円寺の商店街へと姿を消したのでした。
そのショップカードには器と和菓子「山桜桃屋」と書き記してあります(ゆすらやと読むのだそう)。
恐らくこのお店へ行けばマホープロペラの真実が分かるのかもしれない、とポケットの中のセルロイド製のアウラをキュッと握りしめたのでした。
高円寺駅北口の商店街の中にある和菓子の店「山桜桃」。清潔な真っ白な松でできたテーブルには、さっきの中央線の運転手が先客で少し偉そうに座ってました。
抹茶と和菓子のお店だけあって種類も豊富にあり、何を選んで良いのやら、、、と少し迷ってしまいます。
どのお菓子も美味で、綺麗に器に盛り付けられ見るだけでも癒される思いがしました。
お菓子を食べながら感じたことは、器と食べ物の取り合わせというのは、その選ぶ人の人柄が出るのだ、、、、という事。
選択する、、、という行為はある意味、知識や思考というものを超越した何かヴァイブス的な力を秘めているのかもしれません。
皆様是非、山桜桃屋へ。