2015年10月9日金曜日

相田啓介:拭漆(ふきうるし)

白バックではつまらないので、オスカー・ピーターソンをバックに。
拭漆又は摺漆(すりうるし)と呼ばれる作業は漆の仕事の中でも仲々頻度の高い作業の一つです。綿(わた)と木綿布で作った、短穂などで漆を器物に摺り込み、布又はよく揉みこんだ柔らかい和紙などでよく拭き取ります。様々な目的があり、蒔絵などでは多く使う技法ですが、今回は欅やその他の材質を生かす為の拭漆について述べてみます。
こういった仕事の古い前例として正倉院に伝わる、赤漆文観木厨子がありますが、それがどういう内容の物なのか、詳しい事は私には分かりません。
拭漆をするにはまず、木地が滑らかでケバ立っていない事が大事です。木地が良くない場合は砥石や耐水ペーパーなどで研ぎ降ろすのですが、形が変わったり凹凸がでたりしますので、その場合には拭漆の素地にはなりません。
拭き漆の1回分の塗膜の厚みは1~2ミクロンといわれます。大変薄い塗膜なので、数十回重ねなければ十分な使用に耐え得る物にはなりません。又何度も研ぎの作業をします。せっかくの漆の層を減らす作業なので、軽視しがちですが、大切な作業です。
大変薄い塗膜が数十回重なっているので、見た目以上に丈夫なものです。単純な作業の繰り返しなので、根気が必要とされる仕事でもあります。そのためでしょうか、一回一回の漆の拭き取りをきっちり拭き取らず拭き残す手法が流行っています。数十回の作業を数回で済ませる事になります。
拭き残し方に多少の神経を使いますが、拭き残す方法は作業時間の大幅な軽減になります。
見た目は同じ様でも両者を同列に並べる事はできません。使い込んだときの味わいと丈夫さがまったく違います。数十層の漆の塗膜と厚みはほぼ同じでも、数層の漆の塗膜ではまるで違うのは当たり前の事です。鍛え上げた日本刀と鈍な刃物の違いがあります。


やっぱり上手く品物が見えないので、白バックにて。

今日仕上がった小皿とサラダサーバー

長さ15・5センチ

オスカー・ピーターソン&ジョー・パス